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Dragon's nest

Dragon's nest

十六話「A battle start!-1」

「こんにちは。」
祭りの終わった街を後にした一行は、道中、聖職者《クラーヂマン》のような格好をした男とすれ違った。
ただ、聖職者《クラーヂマン》にしては不似合いだったのは、背中に弓を背負っていた事。
そして、ステアの横にいたコケットがその男の紅い眼を見て、怯えた事を誰も気付かなかった事…。
別に誰も警戒してはいなかった。普通にあることだった。道中、幾人もの冒険者やハンターと逢うことがあった所為だった。
アシュタルが頭を下げ、その男の横を通り過ぎた時だった……
『貴方ですね?リグレイア一族の男は…』
耳元で、他の仲間に気付かれないようにその男は言った。
その、言葉にアシュタルが目を見開く。
咄嗟に背中の剣を抜き、その男の喉下に刃を当てた。
「アシュ…!?」
「何故、その名前を知っている!!」
普段、温厚そうなアシュタルが突然、殺意をあらわにし、大声を張り上げたのだ。
他の仲間が驚くのも無理は無かった。
「やれやれ…気が荒いですね…」
喉元に突きつけられた刃を気にする事無く、その聖職者は手に持った錫杖で刃を押した。
『圧し負ける…!?』
ガキィン!と金属が弾けあう音がすると、アシュタルの剣が飛んだ。
ただの聖職者がただの錫杖で、剣士であるアシュタルの剣を飛ばしたのだ。
並大抵の力では、ない。
「こんにちは。そして、始めまして…私の名はカード。ただの聖職者…」
「ただの聖職者があの大剣を飛ばすほどの力があるとは思えないがな…」
今の一連の動きを見ていたリーフが冷静に言った。
「ツバキ、その剣を抜いてみろ。」
「俺がか?」
リーフに言われ、ツバキがアシュタルの剣の柄に手をかける。
「…ぅをい…重いぞ…コレ…」
め一杯の力で、剣を引き抜こうとするツバキ。
だが、剣は地面に刺さったままで、びくりともしなかった。
「それに…ハーフエルフだな?貴様。」
「おや。見破られてしまいましたか…さすがですね。」
「取り敢えずだが、私にも何処かしかにエルフの血が流れているからな…同属やハーフを見分けられるくらいの力はある。」
リーフの言葉の後、カードと名乗った聖職者は口元に笑みを浮かべた。
「困りましたね…まさか、クウォーターが居るとは聞いていませんでした…どう言う事ですか?ガルム…」
「言い損ねただけだ。」
ステアやツバキ、他の仲間達が一斉に後ろを振り向く。
「成る程…はなから敵さんだったって訳か。」
「ヤですねぇ…僕は本当にハンターですよ?……最期に狩ったのは龍二頭でしたけど。確か…光属性の。」
そう言うガルムの目は、獣のように光っていた。
その瞬間、ステアの眼が龍の瞳のように、瞳孔が狭まった。
「お…お前かぁっ!!」
ステアが短刀を引き抜き、その場に立っていただけだったガルムを押し倒した。
「お前が、オトーサンとオカーサン殺シタ本人カ!」
「それがどうしたと?僕は主の命に従っただけです。」
「デモ、何故ステアのオカアサン殺した!?」
「そういわないで下さいよ。人も獣もましてや龍だっていずれはその命、必ず尽きるんですから。あの二匹はそれが早かっただけのことでしょう?」
クスクスと笑うカードの言葉を聞き、カードを振り返ったステアの目には大粒の涙が溢れていた。
「酷イ…ヒドイ!」
その場に泣き崩れるステア。
地面に刺さったままの剣をアシュタルは抜くと、カードと名乗った男の側へと移動したガルム共々睨みつけた。
「……ステア、あの二人がお前の両親の仇だと言うのなら、この場で斬っても構わないな?」
ちらり。と地面に座ったままのステアをアシュタルが見る。
その言葉に、ステアは浅く頷いた。
アシュタルが剣を構えたのと同時に、仲間も一斉に臨戦体勢に入った。

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